006番 われら主をたたえまし
■詩編145編に基づいて作られた詩編歌であり、イギリス国教会の讃美歌集 Hymns Ancient and Modern, Revised (1950) から採られた。作詞者のニコル・グリーヴ(1868-1954 英国)はニューキャッスル王立初等中学校、エデインバラ大学で学んだ後、英国長老派教会の牧師となりニュービギン・バイ・ザ・シーとリヴァプールの教会で牧会した。"We would extoll Thee, ever-blessed Lord" は、彼が1940年に出版した『1650年のスコットランド詩篇歌集:改訂版』(The Scottish Psalter (1650): An Revision)に収められ、書名からもわかるように1650年版を改訂したものである。
■曲は“Old 124th”(Pseaumes de David-ダビデの詩編歌-、1551)であり、もともとは詩編124番のための曲であるが、グリーヴはこの詩編145番による歌詞との組み合わせに指定をした。
■この“ダビデの詩編歌”は、英国プロテスタント(この場合はカトリックとの対比において、即ち、英国国教会を含む・・・ヘンリーⅧ世による英国国教会設立は1534年)の讃美歌の生成と発展に大きな影響を与えた。“ダビデの詩編歌”は、スイスのジュネーヴで編纂されたものであるが、当時スイスでは、カルヴァンによる宗教改革が進められていた。カルヴァンは、「神の言葉が礼拝の主要な地位を占めるべきで、人の創作はそれに代わるべきでない」という見解を持っており、この原則に合致するものとして、いわゆる“詩編歌”(Psaeaumes 旧約の詩編を各国語の韻文に訳したもの)を教会の礼拝用として採用した。旋律は新作もあるが、古いチャントやフランスのバラードや民謡からも取られ編曲された。
時を同じくして、ジュネーヴに逃れていたスコットランドの宗教改革者ジョン・ノックス達のプロテスタントによって英語による幾つかの詩編歌が編纂された。代表的なものが1562年にジョン・デイによって出版された150編の“英国ジュネーヴ讃美歌集”である。この讃美歌集は旋律だけであるが,“Old Psalm”として永らく英国で用いられ、そのうち幾つかは今日まで受け継がれて来た。Old22nd(70番),Old100th(4番、5番、539番),Old124th(6番、226番)等である。
■この曲は最初は非国教会派のあいだに普及したが,今日では国教会でもこれを用いている。