539番 あめつちこぞりて
■讃美歌539から544までの6つの短い歌は普通「頌栄」と呼ばれる。それは三位一体の神に栄光を帰し、その御名をほめたたえる歌という意味である。その原型は既に新約聖書のコリントの信徒への手紙Ⅱの13章13節「主イエス・キリストの恵み、神の愛、聖霊の交わりが、あなたがた一同と共にあるように。」やマタイによる福音書28章19節「だから、あなた方は行って、すべての民をわたしの弟子にしなさい。彼らに父と子と聖霊の名によって洗礼を授け、あなたがたに命じておいたことをすべて守るように教えなさい。わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる。」にもあらわれている。東方教会、西方教会のミサで詩篇を誦した後歌われる頌栄の習慣がプロテスタントの教会にも受け継がれ、詩篇の交読の後だけでなく、礼拝の初めや終わりにも歌われるようになり頌栄の地位が今日のように定まった。
著名な讃美歌作詞者が頌栄の歌を作ったが、一般のプロテスタント教会で「頌栄」というとき、それは通常Thomas Ken(1637-1711)の次の歌を指している。
Praise God from whom all blessings flow;恵みあふるる神をたたえよ
Praise Him, all creatures here below;地にあるすべてのものよ!神をたたえよ
Praise Him above、ye heavenly host;天にいます神をたたえよ
Praise Father、 Son、 and Holy Ghost.父、子、聖霊をたたえよ
Thomas Kenはその年代が示すとおり英国のピューリタン革命とその後の変革の時代を生きぬいた人である。国教会の聖職者として信念を貫き、そのためロンドン塔に幽閉されたこともある。この歌は「めさめよわがたま、あさ日にともない、 ”Awake,my soul、and with the sun”」(讃美歌22番)の最後の節(第10節 日本の讃美歌では第5節までしかない)であるが、「めさめよわがたま…・・」は、ケンがウインチェスター・カレッジの特別校友をしていた時、そこの学生の宗教教育のために作ったものである。ケンの遺言により彼の葬儀は早朝朝日が昇るときこの歌と共に執り行なわれた。
539番の日本語の歌詞
「あめつちこぞりて、かしこみたたえよ、みめぐみあふるる、父、み子、みたまを。」
は、上記のケンの歌から示唆を得て創作された作者不明(日本人)のものである。
この曲の”Old Hundredth”は、英米のプロテスタント教会で用いられているただ一つの共通の頌栄であり、ここに掲げた曲の和声が最も一般的である。
曲名が”Old Hundredth”となっているのは、この曲が詩篇第100編にもとずく讃美歌(讃美歌4番 ”よろずのくにびと、わが主にむかいて”)に採用されたことによる。「詩篇100編3節 知れ、主こそ神であると。主はわたしたちを造られた。わたしたちは主のもの、その民 主に養われる羊の群れ。」この旋律が、讃美歌5番、539番にも採用された。また、ドイツに渡って,Paul Eber(1511-1569)の”Herr Gott、dich loben alle wir われわれ全てのもの、神を褒め賞賛えます”の曲となったので、曲名にこれが併記されている。