神様の領域クリスマスの思い出 

鳥になれたら

あるところに、クリスマスを見せかけの欺瞞だと思っているがいた。彼は、家族に優しく、人に対するは誠実だった。しかし彼は、神が人間として生まれたことを喜び祝うクリスマスの意味を一切信じられなかった。彼は忠実に教会に足を運ぶ妻に言った。

「おまえにはすまないが、神が人間になったということが、どうしても理解できないんだよ。わたしにはばかげているとしか思えないんだ」

クリスマス、イブに、妻と子どもたちは教会の深夜ミサに出かけた。彼はと言えば、家で留守番をすることにした。

「偽善はいやだからね。家にいるよ。でも帰ってくるまで起きて待っているよ」家族の皆が車で出かけてまもなく、雪が降り始めた。彼は窓辺に行き、雪がしだいに本降りになっていくのを眺めた。

「ホワイト・クリスマスか……」

彼は暖炉の傍らの椅子に戻り、新聞を読み始めた。数分後、「ドスン!」という音に驚いて目を上げた。続けざまに、「ドスン!ドスン!……」と同じ音がした。

誰かが居間の窓に雪玉でもぶつけているのだろうか、と彼は思った。表に出てみると、鳥の一群が吹雪の中、必死に避難場所を探して家の窓にぶつかっていたのだ。鳥たちは窓の下で身を寄せ合い、うずくまっていた。

「かわいそうに、ここで凍え死にするのを黙って見てはいられないな」

彼は、こどもたちが小馬を飼っている納屋を思いだした。あそこなら暖かい避難場所になる。

彼はコートをはおり、雪靴を履くと、降り積もった雪の中を納屋に向かった。納屋の戸を大きく開け、中の電気を一つつけた。鳥たちは来なかった。

「えさで誘い込めるかな」

彼は急いで家に戻り、パンくずをみつけると、雪の上に、納屋の入り口に向かってまいた。困ったことに鳥たちはぱんくずには目もくれず、雪のなかでむなしく飛び回ろうとした。彼は腕を振りながら、納屋に向かって鳥たちを追い立てようと試みた。鳥たちは、暖かく明かりの灯った納屋には行かずに、ちりぢりに逃げてしまった。「鳥たちの目には、私は見慣れない恐ろしい生き物に映っていろんだろうな。どうしたら信用してもらえるのか、きっばりわからない。数分間でも私が鳥になれれば、安全な場所に誘導できるのに……」

ちょうどそのときだった。あちらこちらの教会の鐘が鳴りの音に聞き入れった。そして雪の中にひざを落とし、そっとつぶやいた。

「今、ようやくわかりました。神様、あなたがなぜ人間になれたのかが」

ルイス・カッセルズ

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