神様の領域第三部 Part Three 01~07節 

05節

  愛の道は決してたやすい道ではない。その道を歩こうともし思い定めたならば、苦しみに会うことを覚悟しなければならないだろう。「この道を主は行かれた。しもべもまた同じ道をたどるべきではない。」もしかすると、人間的な愛を注いでつくし、へとへとに疲れ切るという状況の中に閉じるこめられることがあるかもしなない。そして燃える太陽に照りつけられるインドの丘辺の草のように、力なくしおれてしまうかもしれない。

  私たちにとってかけがえのない人のために苦労して、それを苦労とは思わなかった。肉体の力を使い果たし、健康を回復できないくらいそこねたが、その働きのせいとは気づかなかった。いや、たとえ気づいたとしても、少しも気にとめることはなかった。ただひたすら愛を注いだ。そしてわたしたちの望んだことはただひとつ、そのように慈しまれた魂が、他の人に仕える者となることだった。だかそれは、実現しない夢だった。

  そしてやがて、どんな犠牲をもいとわず育んだその人から、奇妙な冷たさが返ってくることに気がつくようになった。そのいのちを破滅から救おうとしてぼろぼろに傷ついたわたしたちの心を押しのけようとするかたくなな手があった。

  そんな時(それは愛する者にそむかれる苦しみを味わった人にしか、とうてい理解されないだろう)、どんな苦痛よりも恐ろしいひとつの疑いがわたしたちをつかむ。もしかして、これまで何年も築いてきた愛が今、わたしたちから離れ去ろうとしているのか。「父よ。彼らをお赦してください。彼らは、何をしているのか自分でわからないのです」という主のおことばが、わたしたちの記憶から消え去ろうとしているのか。愛のない心に、愛のない心で応えようとしているのか。

  そのような時、今はすでに年老いたひとりの聖徒が絶望の果てに祈ったことばが、私たちの心を刺す。

  心の深みから、おお主よ、
  あなたに向かって声をあげます。勇気をふりしぼって、主よ、
  あなたのみもとに近づきます。
  わたしのために鞭打たれた
  カルバリのイエスよ。
  何であれ、わたしから求めてください。
  すべてささげます。
  ただ愛は、愛だけはわたしにください。

  そうです。御旨ならば何でも求めてください。すべての希望、人間てきな愛情からくるあらゆる喜び、愛のもたらすあらゆる報酬すべてを、あなたが求めるならばわたしはささげます。ただ愛そのものは、わたしから離れることのないようにしてください。この新しい召命に応えるのに世の常なるものは何ひとつ役に立ちません。わたし自身の中にあるものは、このために決して十分ではありません、おお愛の主、苦難の主よ。あなたの愛をあふれさせてください。わたしを通して愛が流れますように、神の愛が。

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